新潟・越後の言葉で語る昔ばなし

昔話を読んだ後、頭に浮かんだストーリーを、故郷の言葉で語ってみたこて。

『ねずみの嫁入り』

 耳桃(みみもも)の願いは、仲良しの大耳(おおみみ)のお嫁さんになることらった。 でも両親は、誰か立派な婿のところに嫁がせようと、婿探しを始めたろ。

 

ねずみのよめいり (みんなでよもう!日本の昔話)

ねずみのよめいり (みんなでよもう!日本の昔話)

 

ねずみの嫁入り

 むかーし昔のことらった。

でーっこい屋敷の、これまたでっこい蔵に、ねずみの夫婦が住んでいたこて。

 

蔵ん中は、いっつも米や豆の袋がいっぺ積んであって、

ほかのうちを住みかにしてるねずみたちは、

「食うもんがいっぺことあっていいなあ。」「幸せな夫婦らなあ。」

て、うらやましがっていたこて。

 

でも、蔵のねずみも、ねずみのかか(=奥さん、母さん)も、

幸せだーなんか、ちっとも思っていねかったこて。

夫婦には、子供がいねかったすけなあ。

 

だーすけ、ねずみの夫婦は、まいんち、神さまにお願いしたこて。

「どうか、どうか。かーうぇ坊を授けてくんなせ。きっと、きっと、大切に育てますけに。どうか、どうか。」

 

何日拝んだころらったろか。

二人の願いが、とうとう、叶ったいや。

 

ばーかいとしげな女ん子が生まれてぇ。

村中のねずみがやってきて、お祝いをしたこて。

それぞれのうちから、小豆やら、クルミやら、ゴマやら、ちと珍しいもん、持ってきて。

蔵の米と大豆でこしょたごっつぉをいただいたいや。

酒飲んでにぎやかにして、いとしげな女の子の幸せを願ったいや。

 

らけど、隣のうちのねずみだけ、来ねかった。

隣のちいせ家でも、坊やが生まれていたんら。

元気な男ん子が、生まれていたんらよ。

 

女ん子は、「耳桃(みみもも)」と呼ばれた。耳がかーうぇ桃色らすけなあ。

隣の男ん子は、「大耳(おおみみ)」と呼ばれた。耳がおっきかったすけにな。

 

耳桃と大耳は、仲良しになって。

 まいんち、一緒に遊んだこて。

 

「誰が一番かー!」

「誰がげっぽ(=ビリ)らんや?」

かけっこに、柱登り。

ねずみの子らって、競争すんのがでー好きら。

 

大耳が早ーいぇかどうかは、誰もわからん。

大耳は、競争の輪には入らんで、いっつも離れたところで見てるすけなあ。

 

そうして、猫の気配や、人の物音を感じて、仲間を逃がすのが上手らった。

 

足のごった早ーいぇ子ねずみもいたよ。柱登りが得意な子ねずみもいた。

でも、いたずらこきの子ねずみ、きかんぼの子ねずみ、親の言いつけ守らん子ねずみは、すーぐに猫や人に捕まってしもて。

いつの間にか、いねなってしものら。

 

「大耳のそばなら安心。おっきなったら、私は大耳のお嫁さんになんのら。」

耳桃は、いっつも、そう言うてたこて。

 

やがて、耳桃は、ばーかいとしげな娘ねずみになっとぅ。

ねずみの父さんも母さんも、あちこち走りまわって、蔵住まいのお嬢さまねずみの耳桃にふさわしいお婿さんを探したこて。

 

でもー、なかなか、立派な相手は見つからね。

 

そこで、ねずみの父さんは、お寺の蔵に住む物知りねずみのじいさまに相談したこて。

じいさまが言うには。

「立派な婿らて?

世界一立派なのは、なんてーってもお日さまらなあ。」

 

 

 「大耳がいい。私、大耳のお嫁さんになりてのら。」

 耳桃がそう言っても、お父さんねずみは聞いてくれね。

「おめの婿は、立派なお日さまがいいこてや。まあ、一度、お日さまに会ってみよて。」

 

ねずみの夫婦は、あーかい着物を着せて、しゃれこかせた耳桃を連れて。まっくれ夜中に、お日さまに会いに出発したこて。

 

たーけ山のてっぺんの、これまた、たーけ木の枝の上で、東の空からお日さまが昇って来るのを待って。

 

やがて……。

 

にこにこした、お日さまが昇ってきたろう。

 

 「ああ!  お日さま、お日さまー!」

 ねずみの母さんがゆうたこて。

 「この世を照らすおめさまは、世界でいっち、立派な方ら。どうか、うちの娘と結婚してくんねかね?」

 

お日さまは、にこにこ、嬉しそうにゆうたこて。

「おお、おお、いいとも。この私がいねば、この世は真っ暗け。わしは世界でいっち、偉いのら。」

と、ゆうた途端。

 

ほわわわーん、ぷわわわーん。

雲が出てきて、お日さまを隠したろ。

 

「あっはっはー! 忘れておったわ!」

お日さまは大慌てら。

「わしより偉いやつがいたてや!

雲らよ、雲。

こいつは、わしの光をさえぎって、わしを隠してしもうのら。」

 

「そうとも!  お日さまを隠し、月、星を隠し、 空をおおう。

世界でいっち、大っきて立派なのは、俺さまら。」

そこで、ねずみの父さんは、雲にゆうたこて。

「はーあぁ、雲さま。

世界でいっち、えーらい雲さま。

どうか、お願いら。うちの娘と結婚してくんねかね?」

 

すると、雲は、じろーり。

でっこい目で、ちっこいねずみの親子をにらんで答えたこて。

「ふーん?

世界でいっち、でっこて偉い俺さまが、

なーして、ねずみなんかと結婚しなけりゃならんのら。」

 

と、そのとき。

 

びゅうーうううー!

どこからか、 強い風が吹いてきとう!

 

「こらー!威張りこきの雲め!

 威張ってばっかいっと、吹き飛ばすろー!」

 「ひゃー!  風さんかあ!

風さんを忘れていたてば!

世界でいっち、偉いのは、俺を吹き飛ばす風さんらろう。」

 と、雲はそそそそーっと、空の彼方へ逃げていってしもたこて。

 

ねずみ夫婦は、走って、走って。風の後を大急ぎで追いかけて。

母さんねずみはでっこい声で叫んだこてぇ。

 「風さん、風さーん!

世界でいっち、偉い風さーん!

おらちのかーうぇ娘と結婚してくんねかねー!」

「え、えーっ!

困るよ、そんなのー。

私は偉くなんかないよー。」

 

「少しも威張らない。風さんは立派らねえ。」

ねずみの夫婦はますます風さんが気に入って、どこまでも、どこまでも、風を追いかけて走ったこて。

 

ところが、

「ほっほっほー!

私より偉いやつが見つかったいやーっ!」

風はねずみの夫婦に向かって、ゆうたこてえ。

「ほらほら、あそこの壁。

あの壁ときたら、私がいっくら体当たりしてもびくともしねえ。

壁さんこそ、世界でいっち、つーよて、偉いこてぇ。」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……。

ふうん、なるほどなあ……。」

ねずみの夫婦は、世界でいっち偉いものを知って、とぼとぼ蔵に帰ってきた。

 

そーして、自分たちの住む蔵の壁に声をかけたこて。

「壁さん、壁さん。」

「おや、ねずみさん。お帰り。

耳桃のお婿さんは、見つかったかね。」

「はぁ、見つかりましたいね。それはおめさまら。」

ねずみの夫婦は答えたこて。

「風より強い壁さん。どんがにつーよい風でも倒れねおめさんが、世界でいっち、立派な方らいね。

どうか、娘と結婚してくんねかね?」

 

すっと、壁はしょんぼりして、ゆうたこて。

「なにゆうてるいね。

俺ら壁は、あんたたち、ねずみには叶わんこて。

あの家も、あの小屋も、どんがの厚い蔵の壁らたって、おめさんたちにかじられて、穴だらけらねっかて。」

 

ねずみの夫婦は顔を見合わせて。

「ああ、そうか。そうらったか。

ねずみがいっち、偉いのらか。」

 

そんときらった。

「おやぁ 、耳桃。無事にお帰りらか?」

隣の家の壁の穴から、大耳が出てきたろ。

 

ねずみの父さんも 、母さんも、

すぐに大耳に駆け寄って、うれーしそげにゆうたこて。

 

「大耳、大耳。

壁かじるのが得意で、仲間をでーじにするおめが、世界でいっち、偉い。

やっと、見つけたろ!  おめが婿ら。うちの娘と結婚してくれいや。」

 

「え……。」

大耳はもじら、もじら、して、耳まで真っ赤っかになってたけど、

だっれも反対なんかしねかったこて。

 

だって、

「大耳のお嫁さんになるのら。」

て、耳桃はまいんちのようにゆうてたねっか。

 

こうして、耳桃は、仲良しの大耳と結婚することができたのら。

 

たくさんの子ねずみに恵まれて。

ふたりは長生きして、いつまでも幸せに暮らしたのらって。

 

めでたし、めでたし。

いかったねえ。

 

 

 原作  みんなでよもう!日本の昔話ー12

『ねずみの よめいり』

 文:鈴木悦夫    絵:ニ俣英五郎

発行所:(株)チャイルド本社

 

 

 

打豆 110g 5袋

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