幼児向けの短編。握ったご飯、「おむすび」っていう?「おにぎり」っていう? 地方によって呼び方が違う。私は三角おにぎり派らけど、おばあさんが握って持たせてくれたのは、丸いおむすびかな? 俵形かな?
おむすびころりん
むかーし昔。あるところに
おじいさんとおばあさんが住んでいたこて。
家の裏にちいせ田んぼや畑もあるろも、
おじいさんは山が一番の仕事場ら。
春はタケノコ、山菜採り。夏から秋は木いちご、あけび、山ぶどう。栗をひろって、キノコを探して、山をひとめぐり。
なんにもなっていねくても、
草取りしたり、落ち葉や石をひろて、山道をえーび良う(=歩きやすく)したり、
薪(たきぎ)をひろて、帰ってくる。
一仕事終えて、
「さぁて、昼飯にすっかぁ。」
おじいさんが、おむすびを食べようと包みを開けっと、
おむすびが、ころころ、転がって。
ころころ、ころころ、転がって。
穴の中に落ちてしもた。
「おやおや。
こんがのとこに、ふっけぇ(=深い)穴が。」
おじいさんが、穴をのぞくと、
♪おむすびころりん すっとんとん♪
かーわいげな歌声が聞こえてきたろ。
「ほっほっほーぉぉ。」
おじいさんは、楽ーしなって。
穴にもうひとつ、おむすびを転がしたこて。
すっと、また、聞こえてきたろ。
♪おむすびころりん すっとんとん♪
「こりゃー、愉快らねっか。」
おじいさんは、またひとつ、おむすびを転がした。
♪おむすびころりん すっとんとん
♪おじいさん ころりん すっとんとん
そう聞こえたかと思うと、
「あ? あぁーーーっ!」
おじいさんは、穴の中に吸い込まれてしもたこて!
「あぃたたーぁぁ。」
尻もちついたおじいさんが、たんまげて、辺りを見まわすと、
ぞろぞろ、いっぺことのねずみがいてぇ。
「おじいさん、うんめぇおむすびをありがとごぜぇます。」
「お礼にごちそうしますぃね。」
そうゆうて、
ねずみたちは嬉しそうに餅をついたこて。
♪にゃんこの声は聞きたくなーい
ヨーイヨイ ♪ ホイッ、
♪カラスの声も聞きたくなーい
ヨーイヨイ♪ ア、ソーレ、
♪へんび(=蛇)の声も聞きたくなーい
ヨーイヨイ♪
トンタ、トンタ、トンタタッタ、
トンタ、トンタ、トンタタッタ!
歌いながら踊るねずみ、
音を鳴らして、調子をとるねずみ。
んーな、かーわいげに歌うてやのう。
ねずみたちのこしょたごちそうを食て、酒飲んで。
「ばーか、たのーしかったこてぇ。
ばさが心配するっけ、へえ、帰らんとら。」
おじいさんがそう言うと、
ねずみたちは、よいしょ、よいしょ、て
でっこいつづらと、ちいーせつづらを運んできた。
「おじいさん。
お土産にどちらかひとつ、差し上げるれね。」
「およこ、およこ。土産までくれるてか。
おや、ちと、重てえねぇ。わしは年寄りらすけに、ちいせ方をもろうていくこて。」
外はまら、明るかったれも、
夜の山道はおっかねすけ、暮れる前に帰らんばら。
おじいさんは、つづらをしょうて(=背負って)、家への道を急いだこて。
おもしぇこともあるもんら。
猫がおっかのて、あんがの山ん中に住んでいるのらか。
ばか楽ーしげに暮らしたもんられのう。
「ばさ、ばさや。
今日は山で、おもしぇことがあったいや。」
家に着いて、おじいさんが
おばあさんと一緒につづらをあけっと。
「おやーあぁ!」
おばあさんもたんまげた。
つづらの中から、大判、小判がざっくざく。
こんがのお宝、見たことねーぉ。
おばあさんの声を聞いて、
なにしたのらかと、隣の家に住んでるじいさまが様子を見に来たろ。
「どうした、どうした!
おおーっ!
なにしたてば!
小判がこんがにいっぺことぉ。」
隣のじいさまに聞かれて、
おじいさんは、つい、ねずみの穴のことをゆうてしもた。
隣のじいさまは、ちと、欲張りらすけのう。
「じゃあ、でっこい方のつづらを、俺がもろてきてやるこて。」
て、さっそく次の日、おむすびを持って山に行った。
「おお、ここら、ここらな。」
隣のじいさまは、聞いた通りの場所に穴を見つけると、
おむすびを、ぽいぽいって、投げ込んで。
急いで、自分も穴に飛び込んだいや。
おーや、おや。
中は、ばーか広いぁんだねえ。
隣のじいさまがきょろきょろしてっと、
ぞろぞろ、ねずみが出てきたろ。
「おじいさん、うんめぇおむすびをありがとう。」
♪にゃんこの声は聞きたくなーい
ヨーイヨイ♪
トンタ、トンタ、トンタタッタ、
トンタ、トンタ、トンタタッタ!
ねずみたちは餅をついてごちそうしたこて。
じいさまは、がぷがぷ酒を飲むと、すぐに、
「ごっつぉはもういいすけ、土産を見せてくれや。」
て、ゆうたいや。
♪にゃんこの声は聞きたくなーい
ヨーイ ヨイ、
ア、ヨイショー! ハ、コラショー!
ア、ヨイヨイヨイヨイー!
ねずみたちは楽ーしそにつづらを運んできた。
おやぁ?でっこいつづらだけじゃねえ、
ちーせつづらもあるねっか。
こいつら、どれだけつづらを持ってやがる。
よーし。
「にゃ~ん。
にゃ~~ん。
おらおら、俺はな、おめらを食う猫らろう!
全部 つづらをよこさねと、おめたち、ばくばく、食っちもろう~!
にゃ~ん。
にゃ~~ん。」
「ね、猫ら!」
「猫らぞ!」
ねずみたちは大慌て。
んーな、走って逃げだした。
「うはっはっはぁ、バカなねずみらなあ。」
そのとたんに辺りは真っ暗れなって。
「や、小判はどこら? つづらはどこら?」
じいさまが探すけど、見つからね。
「どこら? どこらんや?」
「おい、おい、出口はどこら? 出らんねねっか!」
「出せー、出せてばー、このねずみども!」
欲張りな隣のじいさんは、帰って来ねかった。
次の日、
おじいさんが山に行ってみたけど、
あの場所にも、どこにも、穴が見つからねかった。
次の日も、次の日も、帰って来ねかった。
ねずみの穴にもぐる、ゆうて、
山に行ったっきり。
芋掘っても、まだあるんじゃねーか、あるんじゃねーか、て、いつまでも掘ってるじいさまら。
穴ん中が好きで、もぐらになってしもたんじゃねーか? て、んーなが言うたこて。
おしまい。
CDつき The Rolling Rice Ball おむすびころりん (英語でよもう!はじめてのめいさく(CDつき))
- 作者: いもとようこ,Soshi Uchida
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