新潟・越後の言葉で語る昔ばなし

今まで読み聞かせボランティアで読んできた本を、ふるさとの言葉で読んでみます。少しアレンジもしています。

『わかがえりの水』

むかーし昔。山また山が連なる向こうの村に、ばか仲のいい、おじいさんとおばあさんが暮らしていたこて。


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ある日のこと。おじいさんは炭を焼きに山奥の小屋へ行ったこて。

「あっちぇ、あっちぇ(暑い、暑い)。今日はばか喉が渇くねえ。」

仕事を終えたおじいさんが山道を下ってくっと、

  こぽ   こぽ ……   こぽ  こぽ……

涼しげな音がするねっか。

どれどれ、と、岩の陰を見てみっと、ちいせ泉が湧いていたこて。

「やれやれ、ありがてことら。」

さっそく掌にすくって一口飲めば、なんとも言わんね、いい気持ちら。

「はっこて、ばかうんめお!(冷たくて、とてもうまい!)』

ごくごく、ごくごく、と夢中になって飲んでいっと、ふしぎ不思議。身体中に力が湧いてきて、曲がった腰がしゃっきり伸びて。

あっという間に、元気な若者になったいや!

水に映った顔を見たおじいさんは、はよ、おばあさんに見せとなって。山道をひょんひょん飛ぶように走って帰ったこて。

 

「おーい、ばさ、どこら?  今、帰ったてばー。」

「おや、今日はまた、はーいえ(早い)お帰りらねっか。ああ?  じさらか?!」

迎えに出たおばあさんは、たんまげたこてえ。若い頃のおじいさんがそこに立っているのらもん、ちゃんと足生やして。

「じさ、どうして?  どうしたのら?!」

「なぁに、山で泉を見つけて飲んだらなあ……。」

 

おじいさんの黒い髪、目尻の他にしわのない顔。おばあさんは信じらんねて、くらくらしそうらったれも、この大事に倒れている場合じゃねかったこてや。

「どこ?  どこら?  その泉は!」

おばあさんは、おじいさんの腕にかじりついて聞いたこて。

日焼けして張りのある、たくましいおじいさんの腕。それに比べて、シミだらけのたるんだ腕、そしてシワだらけの指が、嫌でも目にへってくる。

「はよ、はよ教えれね!  わっしも行って飲んで来るすけに!」

もう、くーれなるすけに明日にしれてば、という、おじいさんの声に、じりじりと眠れぬ夜を過ごして、次の日。

おばあさんは、ささーっと朝飯を済ますと、まだ霧のかかる山へ出掛けたこて。

「待ってれね、じさ。 わーけ(若い)娘になって戻って来るすけに。待っていれね。」

 

息を切らしながら、おじいさんに教わった道をえんでいくと、

  こぽ   こぽ……  こぽ   こぽ…‥

鳥のさえずりに混じって、涼ーしげな泉の湧き出る音が聞こえてきた。

「ああ、ここら、ここら。あったてば。」

おばあさんは嬉ーしなって、目尻を下げて、腕まくり。

「よしよし、いただきますいね。」

ごくごく、水を飲んだこて。ごくごく、夢中になって飲んだこて。

わーけなりて。わーけなりて。シワのねかったあの頃みとに。

曲がった腰がしゃんとしてきたのはわかったれも。もうちっと、もうちっとばか、桃みとなほっぺたらった、あの娘の頃に。

おばあさんは本当に、きれいらった娘ん頃に戻りてかったのら。

 

 

陽は傾き始めたけど、おばあさんは帰ってこね。

「道に迷たのらろか?  そっとも、ケガでもして、えーばんね(歩けない)か。」

おじいさんはしんぺぇ(心配)になって、おばあさんを探しに行ったこて。

 

「おーい。」      

おーい。

「ばぁさやー。」    

 ばぁさやー。

「どこらー。」  

  どこらー。   らー。

 

どこにいんのらてば。呼んでも、呼んでも、けってくんのは、やまびこばっから。

 

そうして、あの泉の近くにやってきたこて。

すっと、聞こえてくんのは、赤ん坊の声ら。

涼し水の音どころか、赤ん坊の声が響いているねっか。

「はて、こんがの山ん中に、どうして赤児がいるてば。旅の母子が迷たのらろか。」

岩の陰をそうっと覗いたおじいさんは、

「あっ!」

と、たんまげたこてえ。

赤ん坊がひとりぼっちで、しかも、見覚えのある着物にくるまって泣いているのらもん。

 

おじいさんは赤ん坊のそばに寄ると、へなへなと力が抜けて、膝をついたまんま動かんねなってしもた。

 

「なにしてんのら、ばさや…。飲み過ぎらこてや……。」

 

もう、日が暮れる。

どうすんのら、どうしたらいいのら。

とにかく、おじいさんは大事に赤ん坊を抱いて、山道を下りたこて。

 

乳呑子のいる家はどこら。そこの家の母ちゃんに乳をわけてもらえねろか。

山羊のいる家はどこら。山羊の乳をわけてもらえねろか。

お粥?重湯?でいいのらろか。古着を裂いてしめを作らんばら。

 

どうすんのら、どうすんのらたって、へえ、どうにもならね。

 

まいんち、まいんち、しめ替えて、お粥食わせて。背中におぶうて、洗濯したら、次は畑しごとら。

若者になったおじいさんは、ばか忙しなっとお。

そして、

「♪ばさ、ばさ、飲み過ぎら!」

「♪欲張りばさが、飲み過ぎら!」

そう、うとうて(歌って)、土にクワを振り入れるたび。赤ん坊は、きゃっきゃ、きゃっきゃ、と喜んでいたのらってさあ。

 

 

 

 

〔元祖イクメン?    甲斐の民話です。アレンジ有り。〕

 

原作   みんなでよもう!日本の昔話ー4『わかがえりの みず』

文:間所ひさこ    絵:若菜  珪

発行所:株式会社チャイルド本社

『へっこきあねさがよめにきて』

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とんとん昔のことらこて。

あるところに、ばばさと兄さが住んでいたこて。そうして、兄さが年頃になったすけに、嫁さんをもろたこて。

嫁さんは山ひとつ越え、川ひとつ渡とて、しゃんしゃん、馬に乗ってきたこてや。

ばーか器量良しで、おとなして、よう働く嫁さんらったすけに、ばばさも

「いい嫁ら。ばかいい姉ら。」

ゆうて、喜んでいたこて。

 

とっころが十日たって、二十日たっていくうちに、嫁さんの顔があーおなってきて。病気みとになったてや。

そっらすけ、ある日、兄さが留守ん時に、ばばさが聞いてみたこて。

「姉、姉、おめ、どっか、あんべぇわーれんじゃねえか。わーれば医者に薬もらえばいいすけに、おらにそうっと話してくんねか。」

姉さは黙ーって、もじらもじらしていたこて。

だって、昔の嫁さんは、どんがなんぎことがあっても、「へい、へい、」ゆうて、お姑さんに仕えんばならんかったもん。

そっでまた、ばばさがゆうたこて。

「今日は兄さもいねこんだし、気兼ねなんかしねで、なーんでもおらに話してくれてば。」

そうしたら、姉さはしょしげに(恥ずかしそうに)下向いて、ちいせ声でやーっと話したこてぇ。

 

「おら、あの、ほんがのことゆえば、屁がしとて、屁がしとて……。そんらけど、嫁にきたもんが、屁なんかこいたらだめらと思て、我慢してたんら。」

ばばさはこれを聞くと、そっくりけって笑ろたこて。

「姉、姉。屁なんかだっれも出っこてや。我慢なんかしてっと、身体にわーれすけな、いっくらでもこけばいいこて。」

「はあ、おら、ほんがにこいてもいいのらろか。」

 「ああ、いいこてや、いいこてや。なじょもこけばいいこてや。」

ばばさがそうゆうてくれたすけ、姉さは、うん!と気張って、

ぼんぼん  ぽかーん  

と、こいたこてぇ。

 

その屁のでっけこと、でっけこと。

 

ばばさの身体は、ぶは~と舞い上がって、庭の向こうのでえこん(大根)畑まで飛んでいっとう!

ほんがにたんまげたばばさは、畑に落ちっと、でえこんのあーおい首にしがみついたこて。

「こっれは、おおごとらねっか!  ひとつ引き屁にしてくれやれ、姉ー。」

すっと、姉さのほうも、ばばさを屁でこきとばしてしもて、わーれことしたと思たすけ、すぐに応えたこて。

「ほっしゃー。今、引くれのー!」

今度は思い切り大きく、

すう~ぅっぽんぽん

と、引き屁にしたら、これがまた、でっけこと、でっけこと。

ごったな勢いで引き寄せらったすけ、ばばさは、しがみついてたでえこんを、ズボーンと抜いて。でえこんと一緒に空飛んで、すとん、と庭先にもどったこてや。

「ああ、やれやれ。」と

ばばさがでえこんを放したら、姉さはもう、次の屁がこらえらんねて。

 

ぼんぼん  ぼがーん

と、こいたこて。

 

ばばさの身体は、また、あっぱらぱ~んと吹き上げらって、でえこん畑に飛んでいっとう。

「こっらこらぁ、また、おおごとらねっか、姉、姉ー。」

 「ほっしゃ~、今、引くれー。」

すうーぅぽんぽん

姉さが今度も思いっきり引き屁にすっと、ばばさはまた、ずぼーんとでえこん抜いて、空飛んでくる。すとんと庭先に戻っと、姉さが次のをこく。

そうすっうちに、姉さの屁にだんだん弾みがついてきて。

ぽがーん とこいては、すうーうっぽん !

また、ぽがーん  とこいては、すうーうっぽん!

みるみる庭先に、でえこんの山ができていったこて。

 

そこへ、仕事に出てた兄さがけえってきて。

たんまげて、きりきり怒ったいや。そらそうらこてのう。

庭先で嫁が、ばばさを屁でこきとばして、でえこん採りしてんのらもん。

怒鳴った、怒鳴った。

「あぃや、なにしてんのらてば! こんがのおっかねぇ嫁、おら、うちにおいておかんねこてや!  里へけえれ。すーぐけえってくれや!」

 「兄、兄、おら、なじょもけがひとつしてねえてば。こんがに上手に屁えこいたり、引いたりするもん、今まで見たことねえてば。」

ばばさは、いっしょけんめ取りなしてくったれも、兄さは意地んなって、なおさら聞かねかったこてや。

そんで、姉さもあきらめて、

「ほんがに、おら、けえされたって仕方がねこて……。そらけど、嫁に来るときらって、連れてきてもろたんらがんね、どうか、里まで送ってくんねかね。」

ゆうて、お願いしたこて。

「ほうせば、おら、送っていくこて。」

兄さは嫁の荷物をしょうて(背負って)、一緒にうちを出たこてや。

 

てくり、てくりと、えんで(歩いて)きて、川の渡し場まで来っと。でーっこい船が米俵をいっぺこと積んで、帆を上げていたこて。

でも、どうしたことら、風がぴたっと止んでしもて。船頭衆がいっくら漕いでも竿さしても、船は動かねかったこて。

その様子を眺めてた姉さは、急にけたけた笑ろてゆうたこて。

「船頭衆がよってたかって、そんがの船も出さんねのらかてや。おららったら、屁えひとつで動かせるてがんね。」

船頭衆は、笑わったすけに、むくれてゆうた。

「何をゆうてんのら、そこのおんなご。そんがのことができんのらったら、米俵幾つでもやるすけ、船出してみれ!」

「ほんがにくれんのらな?   今、出してやっこてや!」

姉さはぶいっと、けつを振り向けて、あのでっこいのをこいてやったこて。

ぼんぼん  ぶおおーっ

 

すっと、大風がぼふぁーぼふぁーと吹きだして。

帆をふくらました船は、ずいーっと、沖へ出ていっとう!

たんまげた船頭衆はんーな、しばらく、ぽけーとしてたれも、やがて、約束のもんをくんねまま、船を漕ぎだそうとしたこてや。

「やれ、待て、待ててばー!  根性悪らな、米俵くれるゆうたねっか!」

今度は姉さが怒った、怒った。

川岸んとこから、今度はでっこい引き屁にしたこて。

ずずう  うっぽーん

 

すると、あらあら、船に積んでた米俵が、一俵(いっぴょう)、ひょーんと飛んできとう!

また次、ずずうと引いたらば、二俵目、三俵目が飛んできたすけに、

「こんがのもんでいいか。」と

やめた。

姉さは、兄さを振り向いてゆうたこて。

「いい帰りの土産ができたこて。おまえさま、一緒にしょうてきてくんねかね。」

 

さて、

川を渡うて、姉さが先にえんでいくと、だんだんと山の坂道になったこて。

「ああ、この峠を越せば、おらの里もじきら。こんがに早よ帰されるなんか、思わんかったれよ。」

姉さらって、普通のおんなごらもん。ちっとばか悲しげんなって。とこり、とこり、と登っていって、やーっと着いた峠で、先に休んだこて。

 

峠には一本、柿の木があって。

熟れて真っ赤んなった実が、いーっぺこと、なってた。

 

そこへ、反物売りが、荷物を積んだ馬を引っ張って登ってきたろ。

背伸びしたり、棒でつついたり、なんとか柿をもごうとしたれも、枝がたーけ(高い)とこにあって、届かんかった。

 

姉さはそれを見てゆうたこて。

「のどが渇いたすけ、おらもひとつ食いてなあ。だんれもいねば、屁こいて落とすんらけどなあ。」

すっと、反物売りがたんまげてゆうたこて。

「はあ?  ふざけたおんなごらなあ、屁こいて柿落とすてか?  落とせっわけねえろう。そんがのことできんのらったら、今、やってみれ!  賭けしてもいいこて!」

「賭けすれば、おらが勝つに決まってるこて。」

「なにゆうてんがあ。柿落とせたら、俺の反物、んーなくれるこて。馬つけてやってもいいこてや。」

「本気らか?  おら、わーれようらなあ。」

「ああ、上等もんの反物ら、馬ごとくれてやっこてや!  そんかわり、いいか、あの柿んーならろ。ひとつも残さず、落とすんらろ!」

反物売りがそうゆうすけに、姉さはまた、思いきりきばったこてや。

 

ぽんがぽんがーっ  ぶがぶおぉーっ

と、こいたらば。

柿の木がよさん、よさん

と揺れだして。

ぼたくた、ぼたくた、なってる柿が、んーな落ちてしもたこて。

「……。」

反物売りは、ごったたんまげて、声も出ね。へなへな~としゃがみこんでいたこてや。

姉さは、ちっとばかすまなそうにして、

「そしたら、約束らすけにな。おら、そっくりもらっていくこて。」

って、馬ひいて、峠を下ろとしたこて。

すっと、うんしょ、よいしょ、と米俵をしょうてきた兄さが、

「姉、姉、待ってくんねか。」

ゆうて、呼びとめたてや。

「こんがの宝嫁、里になんか帰せっか。おらともう一度、うちに戻ってくんねかや。」

姉さは、兄さの声に、にんまりとして振り向いたこて。

「おまえさま、こんがのとこまで来て、なんで待ってくれといわっしゃる。おらな、こんがのこともあるかと思て、今、一発きり、残しておいたこて。」

今度は兄さがぶったまげてしもて。

「姉、姉、おめ、まさか俺までこきとばす気らかや!」

兄さは俵を投げ捨てて、すたこらさっと逃げよとしたこてえ。

逃げよがなにしょが、姉さはかまわず、

 

ぼがーん  ぶっぱっぱあー

と、こきつけてやったこて。

 

そのおしまいの屁が、一番でっけえ屁らったすけに、兄さもたまったもんじゃねえこてや。

空高う、あっぱらぱ~んと飛ばさって、山ひとつ、川ひとつ向こうまで飛んでいったこて。

 

姉さは、馬の背中に、米俵と反物と旅の荷物を載して、今、来た道を、ぽっこ、ぽっこともどってきたこて。

うちに着くと。

兄さは庭先の畑に落っこちて、きろーんと目を回しておったこて。でも、どーっこもけがしていねかった。

ばばさは兄さの顔、のぞきこんで、笑うてゆうたこて。

「お前もらか。おら、こうなるものと思うてた。これでいかったこてや。」

 

そっから、兄さは、里へけえれ、なんか言わんかったこて。

姉さも前よりいっそう稼ぐ、いい嫁さんになって。仲良う三人で暮らしたこてや。

 

 

いかったのう。

 

ああ、そうら。

もうひとつ、

おまけの話があるてばの。

 

兄さは家からちいとばか離れたとこに、小屋を作ってくったって。

嫁がぼんぼんこきとなったら、いつでもそこで、こいていいよにしてくったってや。

 

それが、今の「部屋」というなめえ(名前)の始まりらったってや。

今も、んーな、自分の部屋でこいているろかねえ?

 

 

 原作

文:大川悦生さん  絵:太田大八さん

発行所:株式会社ポプラ社

おはなし名作絵本17「へっこきあねさがよめにきて」より

 

 

〔昔から各地で語られていたこのお話。大川さんは、どうしても欲しい場面を創作してつけ足してこの本にしたそうです。私も少々のアレンジを加えました。足りないところを加えたり、一部をわかりやすく変えたり、私が読み聞かせをのびのびとできるきっかけになった本です。吹き出さずに読めるようになるまで数ヶ月かかったけれど(笑)。〕

『さんまいのおふだ』

むかーし昔。ある山のお寺に、和尚さんと小僧が住んでいたこて。

小僧の朝一番の仕事は、お御堂(おみどう)の掃除ら。


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とっとこ、とっとこ、雑巾がけをしてっと、山から吹く風が歌うてる。

   ゆっささ  ゆっさ  そら   揺らせ。

   ぽっとこ  ぽっとこ  落とせいや。    

 

小僧は和尚さんにお願いをした。

 「山で栗の実が落ちてるみとら。和尚さま、今日、裏の山に行ってもいいろか。」

すっと、和尚さんはゆうたこて。

 「裏山ぁ?  だめら、だめら。裏山にはおっかね鬼ばばがいるねっか。やめれ、やめれ。」

 

小僧の次の仕事は庭の掃除ら。秋は何べん掃いても次々葉っぱが落ちてきて、きりがねえ。

そっでも、さっさか、さっさか、掃いてると、山から飛んできたキジバトが歌うてる。

   ぽっとこ   ぽっとこ   お小僧さん。

   来いや   お山の栗ひろい。

 

「和尚さま、庭ぁ掃き終わったら、裏の山に行かしてくんねろか。」

「だめらこてや。鬼ばばに捕めらったら、食われてしもろ 。やめれ、やめておけてば。」

「おら、鬼ばばなんか平気ら。石段を掃き終わったら、行かしてくんねか。おら、栗食いてぇ。栗ひろいに行きてぇ。栗ひろて食いてぇのら!」

小僧が何度も何度も頼むすけに、和尚さんは

「しょうがねなあ。」

ゆうて、奥の部屋にすうっと、行ったこて。

村のもんがあーおい顔して、

「和尚さん、困ったてば……。」

ゆうて来ると、村のもんと一緒にこもる奥の部屋ら。

小僧がそうっとのぞくと、和尚さんは、小僧の読まんね字らか、絵らか、わからねもんを、筆ですらすらっと書いて。

   うんにゃら ~  もんにゃら ~。

   うんにゃら ~  もんにゃら ~。

これまた、小僧にはわからねお経らか、呪いらか、ごにょごにょ唱えていたこて。

終わっと、小僧の方を振り向いて、

「おめの頼みを何でもきいて、おめを守るよう、お願いしておいたてば。いいか、危ねことが起きたら、この札を使うて逃げてくんのらろ。」

そうゆうて、三枚のお札を小僧に手渡したこて。

 

小僧は山道をてんてこ、てんてこ、登っていった。行けば行くほど、おっきな栗がいっぺことなってるもん。

枝つかんでゆっさゆっさ揺らしてみたり、落ちてくるいがを、いてて、いてて、とよけてみたり。おもしぇて、おもしぇて、たまらんこてや。いつのまにか、ふっけ (深い)山奥へ入り込んでしもたこて。

気がつくと、もう、日暮れらった。

 「や、けぇりの道がわからねんやぁ、さあ、どうすっかぁ。」

すっと、どっから来たのらろか、やさーしげなばあさまがあらわって、にこにこしながらゆうたこて。

「おやおや、かーわぇお小僧さん。なんでこんがの山奥に来たてばね。まっくれ中、えんで(歩いて)帰るなんか、おっかねねっか。わしのうちに泊まっていくか?  泊まっていけばいいこてのう。」

やれやれ助かったと思て、小僧はばあさまのあとについて行ったこて。

 

 「さあさあ、お小僧さん。たんとあるすけに、遠慮しねで食てくれね。」

ばあさまはざるに山ほどある栗を、ゆでたり、焼いたりしてごちそうしてくった。

「うんめ、うんめぇ。なーんてうんめぇ栗らろっか。」

食いとて、食いとて、しょうがねかった栗らもん。小僧は腹いっぺこと食たこてや。

すっと、うつらー、うつら。眠っとなってきたこてぇ。

 

小僧はいつのまにか、布団の上でぐっすり寝てたろも、ふと、雨の音で目を覚ましたいや。

耳を澄ますと、雨だれが歌うてる。

   たんつく  たんつく  小僧さん。

   起きて  ばんばの顔を見ろ。

 

小僧は、そうっと起き上がっと、隣の部屋をのぞいてみたこて。

囲炉裏の火が照らすばあさまの横顔。ばあさまの口は……。耳まで裂けて、真っ赤な舌がちろちろ動いていたこてや。

「鬼ばばら…。」

小僧はぶるぶるっと震えあがって。震えながらも考えたこて。どうする、どうすってば……。

 

と、鬼ばばがこっちを向いた。

「お、お、おら、便所に行きとなった。」

小僧は恐る恐るゆうたこて。

 「なに、便所らと?   しょうがねねぇ。ちと待てんや。」

鬼ばばは、小僧の腰に、ぎゅっ、ぎゅっと縄を結びつけて、はじっこを握ってゆうたこて。

「さ、はよ、行ってこいや。」

 

どうやって、どうやって逃げるてば。

ああ、そうら。和尚さまからもろたお札があったねっか。

震える手で腰の縄をほどいて、一枚のお札を結びつけて、ゆうたこて。

「いいか、鬼ばばが『小僧、まだらか。』ゆうたら、おらの代わりに『まあら、まら。』ゆうて返事しれくれよ。頼んだれよ。」

そうして、便所の窓から、たったか、たったか、逃げたのら。

 

小僧はいつまでたっても、便所から出てこんこて。

「小僧、まだらか。」

鬼ばばがゆうと、

 『まあら、まら。』

と、お札が応えた。

「まだらか、まだらか、小僧。」

『まあら、まら。』

「なにしてんのらてば、小僧!」

待ってらんね鬼ばばが、ぐわっと縄を引っ張っと、お札のついた縄だけがけえってきた。

「おのれ、だましたな!」

鬼ばばは、かぁーっと怒って、戸をがらぴしゃっと開けて、小僧を追いかけたこてぇ。

きもん(着物)が乱れてもおかまいなしら。その足のはーぃえこと、はーぃえこと!

「小僧、待てぇ! こん野郎!」

たちまち、追いつきそになったてば。

下り坂を転がるよに走んながら、小僧は二枚目のお札を後ろへ放り投げとぉ。

「でっこい、でっこい、砂山、出れー!」

すっと、鬼ばばの前に、ずさーんと砂が降ってきて、ばかでっこい砂山になったこて。

「なんだぁ砂、こんがの砂。」

鬼ばばは、砂にすねまでもぐりながらも、ずりずり登りきると、今度は滑り落ちる砂と一緒にざりざり下りて、

 「待て、待て、待てぇ!」

と、また、ごったな勢いで追いかけてきた。もうちとでつかめられそになって、小僧は、最後のお札を投げたこてぇ。

「でっこい、でっこい、川よ、出れー!」

すっと、鬼ばばの前に、ざぶーんと大水があふんでて、ざんぶら、ざんぶら、流れ始めたいやぁ。

「なんだぁ川、こんがの川。」

鬼ばばが川をざぶざぶと渡とてるうちに、小僧は、やっとの思いでお寺に逃げ込んだこて。

 

「はぁ、はぁ、和尚さま、助けてくれ、はぁ、はぁ、鬼ばばが、鬼ばばが、追っかけてくるてばー!」

転んで泥まみれ。汗びっしょりの小僧が、よろよろ泣きながら縁の下にもぐっと、すぐに、目ぇ吊り上げた鬼ばばが駆けて来たてば。

「やい和尚!  ここに小僧が逃げてきたはずら。おれをだましたとんでもねえ小僧ら。よくもあんがの、こ憎たらし小僧、寺においてたもんら! さぁ出せ 。はよ出せてば!」

 

けど、火鉢で餅を焼いてた和尚さんは、落ち着きはろて、ゆうたこて。

「なに?  小僧がおめさまんとこまで遊び行ってたかや。そりゃ、わーれかったのう。きんのから姿がめーねと思てたれも、そんがに遠くに行ってたかや。どこまで遊び行ってんのらか、まだ帰って来ねてばね。

おう、そうら、そうら。おめさま、化けんのがばか上手なんらてねえ!   わしもこの頃、化ける修業してんのられも、どうら?  わしと化け比べをしてみねか?」

すっと、鬼ばばは、化けるのがでー好きらすけに、目尻下げて、うれーしげな顔して、ゆうたこて。

「おう、よし、ちと待ってれ。おれから化けて見せる。」

   たかずく  たかずく  たかずくよう。

   たんたん   たかずく  たかずくよう。

 

鬼ばばはみるみるうちに、どんどろ、どんどろ、でーっこなって。

天井までつずく大入道になったこてや。

 

 ほほうーと見上げていたれも、和尚さんは動じずにゆうたこて。

「てえしたもんらのう。まぁ、わしらって、おっきくはなれっけど、ちいせなんのはむずかしもんら。

おめさまも、ちいせはならんねのらろう?」

「あ?  なにゆうてる!  おれに化けらんねもんなんか、あるかてや!」

     ひくずく  ひくずく  ひくずくよう。

    ひんひん  ひくずく  ひくずくよう。

 

鬼ばばは得意んなって、豆みとにちいせなってみせたこて。

 

「およこ、およこ。こりゃまた見事な化けっぷりらねっか。わしなんか、恥ずかしようらのう。」

和尚さんはそうゆうて、ちいせ声できゃんきゃん騒ぐ鬼ばばをつまむと、ぷうーっとふくれた餅にはさんで、ぱくっと。

食てしもたこて!

     とっぴん   ぱらりの  ぷう  の    ぷう!

 

 

 〔だいぶ加筆してしもたれも、私のでー好きなお話らこて。〕

 

 原作

文:小暮正夫さん

絵:箕田源二郎さん

発行所:株式会社チャイルド本社

『みんなで読もう!日本の昔話⑦ 

さんまいのおふだ』

『マッチ売りの少女』

 〔名作は国境を越え、言葉の違いを越えても名作のはず。その考えから、この本を読んでみたこて。 〕

原作  アンデルセン

与田準一 ・文 杉田 豊・絵

世界文化社発行 『世界の名作⑦マッチ売りの少女・雪の女王』より

 

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         マッチ売りの少女

さぁめ (寒い)日らった。雪が降ってるんらもん。それは、一年の一番おしまいの日の夕方らった。

薄暗い通りを、ぼろを着た女ん子が歩いていた。帽子もかぶらんで、しかも、裸足らったこて。

うちを出っときには、木靴を履いていたのらろも。こないだまで母ちゃんが履いていた、ちとでっこい木靴。

さっき、道を横切ろうとしたとき、二台の馬車がごったな勢いで走ってきたすけに、あわてて転んで。片っぽの靴はどっかへ飛ばしてしもて、もう片っぽは、通りかかった男ん子が、拾って持っていってしもた。

 

前かけにマッチの束をいっぺこと入れて。手にも一束持って。今日は一日中歩いたれも、だんれもマッチを買うてくんねかったこて。

腹がへって、腹がへって。体もはっこ (冷たく)なって、足は赤と青のぶちになっていたこてや。

 

雪がひらひらと、なーげ (長い)金色の髪に降りかかってきた。どこのちの窓からも、明かりが外まで射して。鳥を焼くいい匂いがぷんぷんしてきたこて。

 「ああ、今日は年越しらった。」

女ん子は、家と家の間の、せーめ (狭い)空き地の隅っこにしゃがみ込んだれも、さぶさ (寒さ)はひどぉなるばっから。

マッチはひとつも売れてねえし、このままけぇっても、父ちゃんにぶたれるにきまってる。うちにけぇってもさぁーめしなあ。壊れた屋根からも壁の隙間からも、風がぴゅうぴゅう吹き込むのらもん。

はぁーっと息を吹きかけて手を見っと、死んだような色になっているてば。

「はっこい (冷たい)、はっこい。あっためねばだめら。」

 

女ん子は、一本引き抜いたマッチの先を、シュッと壁で擦ったこて。

火花が出て、明るい、あったけ炎が燃えたこて。

なんという、不思議な光ら。ぴかぴかした真鍮のふたと胴のついたストーブの前に座っているようらったこて。

そうら、足もあっためよ、と思て、急いで足を差し出したれも、もう火は消えて。

ストーブもすうっと見えなくなってしもた。手にはマッチの燃えさしが残っているきりら。

 

しかたねぇ、また、新しいマッチを擦ったこて。

マッチの光が壁を射すと、そこに部屋が現れて。真っ白い布をかけたテーブルの上に、ばかおいしそうなごちそうが並んでいたこて。

そして、ほかほかと湯気を立てた肉が、鳥肉が、ひょいとお皿から、ぴょんとテーブルから、飛び降りて!

ほら、こっちに歩いてくる!

そのとき、マッチの火は消えて。

壁は元の冷たい壁にもどったこて。

 

女ん子は、もう一本、マッチを灯した。

すっと、今度はどうら!  きっれーなクリスマス ・ツリーの下に座っていたこて。

いつらったか、お金持ちの家の窓越しに見たのより、ずっと、ずっと、すっごいツリーらこて!

何千というキャンドルが、緑の枝の上で燃えて輝きながら、こっちを見下ろしてる。

女ん子が思わず両手を伸ばしたとたん、マッチの火は消えて。

無数のクリスマス・キャンドルは、たぁーこ(高く)、たぁーこ、空へ昇ってって、きらきら光る星たちになったこて。

それでも見上げていたら、やがて星のひとつが、光の筋になって流れ落ちた。

 「あっ、誰か死んだ。」

女ん子は、今はもうのうなった (亡くなった)ばあちゃんの話を思い出したこて。

 

   星が流れるとき。 それは、人の魂が神さまのところへ昇って行くときなんらよ。

 

女ん子は、また一本、マッチを擦ったこて。

そうしたら、明るく灯った光の中に、あの懐かしいばあちゃんが、にこにこして立っていたこて。

 「ばあちゃん!  行くな、行かねでくれ!

マッチが消えたら、行ってしものらろう!

あのあったけストーブや、鳥の丸焼きや、クリスマス・ツリーが消えてしもたみとに!

ばあちゃん!  ばあちゃん!  あたしを連れてってくれ、連れてってくれてばー!  ばあちゃーん!」

女ん子は叫んで、今度は残っているマッチをいっぺんに擦ったこて。

マッチは昼間のように明るく燃えて、手を広げたばあちゃんは、あったこて、やさして、きれーらった。

ばあちゃんに包まって、女ん子はほーっとして、幸せらったいや。

もう、さぶさに震えることもね。腹がへることもね。ぶたれるしんぺえもしねたっていいのら。

ばあちゃんと一緒に、神さまの国に行くのらから。

二人は光に包まって、たぁーこ、たぁーこ、空に昇って行ったこてや。

 

 

さぁめ、さぁめ、次の朝。

新しい年のお日さまが、小さい体を照らしたこて。年越しの晩に、マッチを一束持って凍えて死んだ女ん子の。

 「マッチを擦ってあったまろうとしたんらねえ。」

見つけた人たちはゆうたれも、

口元に笑みを浮かべて死んだ女ん子が、どんがにすばらし、どんがにきれいなもんを見たか、どんがに幸せらったか、知る者はいねかったこてや。

         

 

〔  おわり。 〕       

『わらしべ ちょうじゃ』

 〔秋の夜長にこんがの話はなじらろか ?〕

 

原作  奈街三郎さん・文   清水耕蔵さん・絵   チャイルド本社  発行


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      わらしべ   ちょうじゃ

むかーし昔。あるとこに、貧乏らけど、心のやさーし(優しい)若者がいたこてや。

あるとき、若者は二十一日の間、お寺にこもって、観音さまにお願いをすることにした。

「どうか、どうか、おれを貧しさから救うてくださらねろか……。」

ちょうど二十一日目のことらこて。

若者の夢ん中に、観音さまが現れてゆうたこて。

「ここを出たらば、一番はじめに手に触れたものを大事に持っていきなされや。」

 

 「あっ!」

若者はお寺の門を出たとたん、石につまずいた。

そして、気がつくと、いつの間にか一本のわら、わらしべをつかんでいたこてや。

 

若者がわらしべを持ってえんで (歩いて)いくと、アブが一匹、顔のまわりをぶんぶん飛ぶ。

「ええい、うるせー虫ら!」

若者は小枝の先に、捕まえたアブをわらしべで縛りつけっと 、またえんでいったこて。

すっと、

「あの虫が欲し、あの虫が欲しいよう。」

幼児(おさなご)の声が聞こえてきた。

 「欲しいよう、欲しいよう。」

(観音さまにいたでーた、でえじなわらしべらけど、あんがに欲しがってんのらから……。)

若者は、アブを枝ごと、その幼児に渡したこて。すっと、

「わがままゆうて、わーれねぇ。ちぃーとばからけど、お礼らこて。」

ゆうて、子供のかあちゃんが、若者におっきなみかんをみーっつ、くれた。

 「やあ、一本のわらしべが、三つのみかんになったぃやぁ。」

若者はみかんを持って、またえんでいったこて。

 

しばらく行くと、おんなごが、道端にうずくまって休んでいた。

お付きの者がゆうたこて。

「奥方さまはのどが渇いて動かんねのら。どっか、このあたりに、水はねえろかのう。」「水はねえろも……。そうら、このみかんを食えばいいこてや。」

(観音さまにいたでーた、でーじなみかんらろも、あんがになんぎそうにしてるもん。)

若者は三つのみかんをんーな (みんな、全部)手渡したこて。

 「助かりましたいね。これはお礼ら。受け取ってくれね。」

おんなごは、きっれーな絹の反物 (たんもの)を幾つか、若者に差し出したこて。

「やあ、今まで見たこともねえ、ごったいい反物になったぃや!」

若者は反物を持って、またえんでいったこて。

 

しばらく行くと、それはそれは立派な馬に乗ったお侍(さむらい)の一行にでおうたこて。

ところが、その馬は、突然苦しみだして、暴れたかと思たら、ばったり倒れてしもたこて。

 「ええい、この急いでっときに、困ったもんらのう!」

お侍は鞍(くら)や手綱(たづな)を外すと、家来を一人だけ残して、足早に行ってしもた。

(かわぇそな馬らな。ここまで精一杯走って来たのらろう。おれの目のめえで倒れたのは、観音さまのおぼし召しらかもしんねこて。)

若者は絹の反物をひとつ、家来に渡してゆうた。

 「どうか、これでその馬を譲ってくんねかね。」

馬の始末に困った家来が、喜んで反物を持って行ってしもと、若者は一生懸命、観音さまに願ったこて。

「かわぇそなこの馬を、どうか、どうか、助けてくんなせや。死なせんでくんなせや。どうか、どうか。」

すると、馬は若者の声が聞こえたかのよに、耳をピクピク動かして、目ぇをぱちっと開けて、やがてすっくと立ち上がったてば。

 「あー、いかった。助かった。

よしよし、残りの反物で立派な鞍と手綱を買うてやるすけにな。」

若者は馬をなぜてゆうたこて。

 

若者の馬を見たもんは、んーな(みんな)こうゆうた。

「おい、見れてば、ごったいい馬らねっか!」

「たーけ銭出して買うたんらろう!」

若者は胸を張ってえんでいったこて。

「ありがてのう。一本のわらしべが、こんがのいい馬になって。」

 

 

馬に鞍をつけ、手綱をひいてえんでいくと、ひーろい田んぼに、りっぱなお屋敷が見えてきたこてや。

どうやら、引っ越しの最中みとで、屋敷の中から、荷を運び出す者、荷車に載せる者、男衆が忙しそうに働いていたこて。

すっと、

でっこい松の木がある門のとこから、若者を呼ぶ声がした 。

「これこれー、そこの兄さ、そのりっぱな馬をわしに譲ってくんねか ー!」

 

「こんがの立派な馬が、ちょうど欲しかったところら。わしはこれから大急ぎで、遠くの国に行かねばならんのらてば。わしの屋敷と、畑と、田んぼも、んーなやるすけに、この馬、わしにくんねか?    どうら ?  兄さ。」

 

断る理由があるかてば。若者は喜んで取りかえることにしたこて。

 「やあ、一本のわらしべが、こんがに広い畑や田んぼになったれやぁ。」

 

それからというもの、若者は一生懸命、汗を流して働いた。

朝はくーれうちから、とっぷり日がくれるまで。あっちぇ日もさぁめ日も、せっせと稼いだこてや。

 

ひーろい畑と田んぼらすけ、何人も人をやとたけど、豆もなすもでえこんも、おもしぇほど実って、うんめえ米もいっぺこと採れたこて。

貧乏らった若者は、何年もたたんうちに『長者』と呼ばれる、大金持ちになったってや。

いかったねえ。

 

〔超、ラッキーボーイらねぇ。〕

 

 おしまい。

 

 

 

新潟・越後の言葉で語る昔ばなし。「桃太郎」① 誕生

昔むかーしあったこて。
爺さと婆さがいたこてや。
毎日毎日、仏様に、
子を授けてくれと拝んだれも、
とうとう授からんで、
あっちぇ夏も、さあめ冬も、
さびしく暮らしていたこてや。

ある日、爺さは山へ柴刈りに。
婆さは川へ洗濯に行ったこて。
畑仕事で汚った着物を、じゃーぶじゃぶ、ごーしごしあろてたら、

どんぶらこー、どんぶらこ。
信濃川の流れに乗って、ひとーつ、またひとつ。
次々、桃が流れて来たこてや。

木から落ちた桃らろか?
誰かが落とした桃らろか?
わからねろも、
婆さは、一番でっこい桃をなんとかつかまえて、抱えて家にけえったこて。

「なに? ばかでっけ桃らねっか!

爺さもたんまげたこて。

どうしたもんらか考えったけど、やっぱ、食てみることにしたこて。

そうっと包丁で切ろうとすっと、
桃は、ぱかっと、ふたっつに割れて、
ほぎゃーほぎゃーと元気な坊やが出てきたこてや。

桃から生まれたすけに、桃太郎となめぇをつけて。
爺さと婆さは、坊やを大事にでえーじに育てたこてや。



〔NGT48の記事を見て。故郷のなまり懐かし。少々アレンジを加え、ばあちゃんになったつもりで語ってみたら、この通りらこて。〕